休業損害
交通事故で受傷して仕事ができなくなったら、加害者へ「休業損害」を請求しましょう。サラリーマンや自営業者だけではなく、主婦や失業者でも休業損害を請求できる可能性があります。
この記事では休業損害が発生するのはどういったケースなのか、パターン別の休業損害計算方法をご紹介します。
事故に遭われて仕事や家事ができなくなりお困りの方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.休業損害とは
休業損害とは、交通事故によって発生した減収についての損害です。
事故に遭うと、入通院治療のために仕事ができなくなるケースが多々あります。すると、本来なら働いて得られたはずの収入を得られなくなり、損害が発生するでしょう。
そういった減収分を「休業損害」として加害者側へと請求できます。
休業損害を請求できるのは、以下のような人です。
- サラリーマン
- 自営業者
- 主婦等の家事労働者
- 一時的な失業者
- アルバイト、パート
サラリーマンの場合、有給を消化して給料が払われた場合にも休業損害が発生します。一方、有給を使わなかったけれども休業中も職場から給与が支払われた場合は、原則として、被害者の損失が発生しないので休業損害の請求はできません。
2.休業損害の計算方法
休業損害は、以下の計算式で計算します。
- 1日あたりの基礎収入額×休業日数<.li>
様々な計算方式がありますが、たとえば、サラリーマンの場合には事故前3か月分の平均給与から1日あたりの基礎収入額を算定する方法があります。自営業者の場合には事故の前年度の確定申告書から1日あたりの基礎収入額を計算するのが通常です。
主婦や主夫などの家事労働者が「現実の収入」がないケースでは、賃金センサスという統計資料における「全年齢の女性の平均賃金」を使って算定します。2018年における全年齢の女性の平均賃金額は382万6300円なので、日額にすると10,483円となる計算です。
失業者の場合には、学歴や年齢別の平均賃金額を使ったり、失業前の収入を参考にしたりして算定するケースが多いでしょう。
会社役員の場合、交通事故に遭ったからといって必ずしも休業損害を請求できません。会社役員の受け取る役員報酬には「利益配当部分」が多く含まれており、本人の労働の対価としてお金が払われるわけではないからです。役員報酬の全額が「利益配当部分」とされると、休業損害は発生しないことになってしまうでしょう。
ただ経営者や会社役員とはいっても、本人の労働によって会社を動かしているケースが少なくありません。そういったケースでは、役員報酬のうち「労働対価部分」に相当する休業損害を請求できます。
3.パターン別、休業損害の請求方法
以下では、パターン別の休業損害請求方法をご紹介します。
3-1.サラリーマンの場合
以下の資料を用意して保険会社へ提出しましょう。
- 休業損害証明書
保険会社(自賠責)の書式を使って職場で作成してもらいましょう。
- 源泉徴収票
- 3か月分の給与明細書
3-2.自営業者の場合
事故の前年度の確定申告書を用意して保険会社へ提出する必要があります。
「休業日」や「休業の必要性」については、一般的に、診断書や診療報酬明細書によって証明します。
3-3.主婦の場合
主婦の場合、外で働いていなければ収入関係の書類は不要です。
兼業主婦の場合には、賃金センサスによる全年齢の女性の平均賃金額と現実の収入額を比べて、高い方を基礎収入として算定します。合計額にはならないので、注意しましょう。
一方、現実の収入額に基づいた減収を主張する場合、パートや派遣社員、契約社員などとして働いているそれらの給与明細書や源泉徴収票、勤務先に作成してもらった休業損害証明書を用意しましょう。
3-4.失業者の場合
失業者の場合には、以下のような書類を集めましょう。
- 就職活動をしていたことがわかる資料(ハローワークの資料等が一般的です)
- 内定していた場合、雇用契約書や雇用条件通知書
- 前職での収入証明書類(給与明細書、源泉徴収票)
- 事業を開始しようとしていた場合、準備状況がわかる資料
3-5.役員の場合
取締役等の会社役員、経営者の場合、役員報酬額を証明する給与明細書等の資料だけではなく「利益配当部分」と「労働対価部分」を区別するための資料が必要です。以下のようなものを用意しましょう。
- 給与明細書、源泉徴収票
- 決算報告書
- 月次損益計算書
- 株主総会議事録(事故によって役員報酬を減額、不支給とした記録など)
- 法人事業概況説明書
- 会社の従業員や組織構成が分かる資料(事実上経営者の一人会社の場合などには、労働対価部分が大きくなります)
また会社役員が休業損害を請求すると、法律的には「労働対価部分については休業損害を請求できる」はずですが、保険会社は否定してくるケースが少なくありません。
そういった場合でも、裁判をすれば休業損害が認められる可能性が充分にあります。
4.休業損害を適切に受け取るには弁護士へ相談を
休業損害は、交通事故で働けなくなったとき、生活の支えになる大切なお金です。適正に払ってもらえないと大変な不利益となるでしょう。弁護士がアドバイスいたします。お気軽にご相談ください。