損害賠償額の決まり方
交通事故の損害賠償は,簡単に説明すると次の費目を足した合計になります(下記以外にも損害を請求できる場合があります)。
人的損害
- 治療費
- 通院交通費
- 休業損害
- 傷害慰謝料
- 逸失利益
- 後遺障害慰謝料
- (死亡慰謝料)
- その他
物的損害
- 修理費用
- 代車費用
- 評価損
弁護士費用
(遅延損害金)
1.治療費とは
治療費とは,まさしく治療に要した診察代等病院に払ったお金です。もっとも,相手方に保険会社がついている場合は,保険会社が直接治療費を病院に払っているのが通常です。
診断書を作成した際に病院へ支払った文書料や医学的に効果のある装具費用も請求ができます。
但し,症状固定後の治療費は,原則として請求できませんので,慎重に判断すべきです。後遺障害診断書に症状固定日を書く欄がありますが,この日を裁判所は重視します。この日以後の治療費については,請求できる場合が限定されます。
2.通院交通費とは
通院に要した交通費を請求できます。車を利用した場合は,ガソリン代を請求できます。ガソリンスタンドで給油した際の領収書等は不要です。病院と自宅の距離に1キロあたりのガソリン代をかけて計算するのが通常です。
電車やバスを利用した場合も,原則として,切符や領収書をとっておく費用はありません。タクシー利用は,領収書を残して置かなければなりません。タクシー代は金額がかさむことも多く,電車やバス等より安価な交通機関による通院が難しい場合に限られます。
3.休業損害とは
事故によって,減収が生じた場合に休業損害を請求できます。サラリーマンの場合は,休業損害証明書を職場で書いてもらい,源泉徴収票をつけて請求するのが通常です。
通院した日については,休業損害を請求することにほとんど問題はありません。
通院はしないがケガのために仕事を休まざるを得なかったという場合に、休業損害を請求できるかはケースバイケースです。
主婦の場合も,休業損害を請求できます。この場合は,休業損害証明書は不要です。賃金センサスを前提に,基礎収入を計算するのが通常です。パート等を行っている主婦は,賃金センサスと収入額を比べて,高い方を基礎収入とするのが通常です。
自営業の場合は,確定申告書の控え等から過去の収入を算出しそれを前提に算定します。
良く問題となるのは,取締役等の役員報酬です。一般的には,取締役等の役員は,休業しても報酬額は変更がないとするのが通常です。もっとも,これは大会社の場合で,一人でやっている会社ですと社長が休むと,収入が減るのは明らかです。
したがって,このような場合は休業損害を請求できるのが原則ですが,保険会社は,役員は休業損害を支払わなくていいという原則から出発しますので,この場合でもなかなか支払おうとしない場合があります。
4.傷害慰謝料とは
傷害慰謝料は,通院日と通院期間を基準にいわゆる赤い本という本に掲載されている基準表にしたがって,慰謝料が算定されます。
なお,通院日の3倍もしくは3.5倍と通院期間を比べて短い方を傷害慰謝料の基礎とすることもできますので,保険会社側はこのような主張をして来ることもあります。
なお,裁判では、損害賠償額の公平性の確保の見地から、傷害慰謝料は,赤い本の基準通りになるのがほとんどです。
傷害慰謝料には,任意保険基準があり,弁護士が介入すると裁判基準にアップすることがあります。但し、慣れた保険会社の担当者や保険会社側弁護士ですと,他の争点もある場合は特に,裁判基準が良ければ裁判してくださいという対応をしてきます。
保険会社は,弁護士が就いたから裁判基準の傷害慰謝料を提案するのではありません。裁判になった場合にどうせ裁判基準を払わせられるなら,今裁判基準で支払っておいた方が得だという計算に基づいて支払いをしています。
DUONでは,弁護士委任するよりも、被害者の方にとってメリットがある場合は、その旨と弁護士に委任しない場合の対応方法をアドバイスしています(もちろん,それでも委任したいという場合に無理にお断りすることはありません)。
5.逸失利益とは
逸失利益とは、後遺障害が残存する(または死亡した)ことによって、将来見込まれる労働能力の喪失を金銭的に評価した損害のことをいいます。
逸失利益は,様々な論点を含みます。弁護士にご相談下さい。後遺障害等級認定前にご相談いただければ等級認定に向けた診断書の作成等についてアドバイスできますので、できれば、症状固定する前にご相談いただける方が望ましいです。
後遺障害の等級認定が出た後でも、逸失利益が否定されるケースがありますので、万全の備えをしなければなりません。
6.後遺障害慰謝料とは
等級認定の結果に応じて、定型的に認めるのが裁判実務です。例えば、後遺障害等級14級であれば、110万円です。
後遺障害にかかわる賠償請求をお考えの場合は、複雑な事案が多くご自身で適切な賠償請求することは難しいです。DUONの無料相談をご利用下さい。
7.死亡慰謝料とは
死亡慰謝料は、一家の支柱(妻や子がいる場合等)、配偶者などの事情によって金額が左右されます。もっとも、これは目安にすぎず、個々のケースによって、多少の増減があります。慰謝料は、近親者にも固有の慰謝料が認められますが、一般的には、この死亡慰謝料を算定する際にそれらを含めて考慮します。