示談金の額
交通事故に遭って保険会社に賠償金を請求するとき、多くのケースでは加害者側の保険会社と「示談交渉」を進めます。ただ示談が決裂したらADRや訴訟を利用しなければなりません。
実は同じ交通事故でも、示談、ADR、訴訟、裁判上の和解など、解決方法によって基準となる賠償金の額が大きく変わります。
今回は示談、ADR、訴訟、裁判上の和解のそれぞれにおいて、被害者が受け取れる賠償金額にどの程度の違いが生じるのかご説明します。
これから交通事故の賠償金を請求する方やすでに示談の話し合いを開始している方は、是非参考にしてみてください。
1.示談の場合
示談とは、保険会社と直接交渉をして話し合いによって賠償問題を解決する方法です。
示談の場合、賠償金は高くなりません。
そもそも被害者が自分で示談交渉をすると、低額な「任意保険基準」を適用されるので、法的な基準より大きく賠償金額を下げられます。たとえば慰謝料は、法的な基準の2分の1程度まで減らされるケースも少なくありません。
また遅延損害金や弁護士費用も請求できません。
一方、示談交渉でも弁護士に依頼すると、相手方保険会社からすると裁判になる可能性が高くなるので、高額な法的基準(弁護士基準)に近い金額で提案されることが多く、本人で交渉するよりも上昇する傾向があります。それでも遅延損害金や弁護士費用はつきません。
2.ADRの場合
交通事故紛争処理センターなどのADRを利用する場合には、法的基準に近い基準で賠償金額が計算されます。
被害者が示談交渉する場合よりは高額になる可能性が高いといえるでしょう。
ただ弁護士基準と比べると多少の減額を求められるケースもありますし、遅延損害金や弁護士費用は請求できません。
3.訴訟の場合
賠償金を訴訟(裁判)で請求する場合が、一般的には、もっとも高額な賠償額の獲得が期待できます。
まず、訴訟の場合には法的基準が適用されるので、任意保険基準(被害者が自分で示談交渉する場合に適用される基準)よりも大きく金額がアップします。
また訴訟で判決が出るときには、遅延損害金と弁護士費用が加算されます。遅延損害金は、交通事故発生日から年率3%として計算します。弁護士費用は、認められた損害賠償金額の約10%です。
訴訟で賠償金が増額される具体例
たとえば賠償額が1,000万円のケースで交通事故後300日後に判決が出た場合を考えてみましょう。
遅延損害金の金額は1,000万円×3%×300÷365日=246,575円です。
弁護士費用は100万円となります。
よって、合計11,246,575円の賠償金を受け取ることが可能となります。
示談やADRの場合、多くても1,000万円しか受け取れないので、裁判によってかなり増額されたことがわかるでしょう。
4.裁判上の和解をする場合
訴訟で交通事故の賠償金を請求するとき、判決を待たずに途中で「和解」するケースも多々あります。
和解とは、裁判官の勧告によってお互いが話し合い、合意して訴訟を終わらせる手続きです。
訴訟上の和解をするときには、基本的に法的基準で計算するので被害者が自分で示談交渉をする場合よりは賠償金額が大きく上がります。
ただし遅延損害金と弁護士費用は加算されません。
調整金について
最近では、和解するときに「調整金」という名目で、弁護士費用と遅延損害金の一部が和解金に上乗せされるケースが多くなっています。全額ではありませんが、一部が加算されることにより、示談やADRよりは賠償金が上がる可能性が高くなるでしょう。
5.判決か和解か迷ったら
交通事故で訴訟を起こしたとき、途中で和解するか判決まで進めるか、迷うケースが少なくありません。
その場合、「勝てる見込み」と「示談金の金額」によって判断しましょう。
明らかに相手の言い分が不合理で勝てる可能性が高いなら、あえて妥協する必要はありません。判決まで進めて高額な賠償金を勝ち取りましょう。一方負けるリスクがそれなりにあるなら、多少譲っても和解した方が良い可能性があります。
次に調整金が低すぎると考えられる場合、判決を得て弁護士費用と遅延損害金の満額を計上してもらった方が得になりやすいといえます。特に賠償金が高額な場合、調整金も高額になるので、安易に妥協すべきではありません。
6.示談か訴訟かADRか、迷ったら弁護士までご相談を
保険会社と示談交渉をしてもめてしまったら、妥協してでも示談を成立させるのか、訴訟やADRを利用すべきか迷ってしまうものです。
確かに訴訟をすると遅延損害金や弁護士費用が加算されて高額な賠償金を受け取れる可能性があります。一方で敗訴リスクもあるので注意しなければなりません。
弁護士までご相談ください。具体的な状況をお伺いして、最適な手続きをご提案いたします。弁護士が代理人として示談交渉に対応すると、それだけで賠償金が大幅にアップするケースも少なくありません。訴訟を起こすにも弁護士が必要となるでしょう。
当事務所では、交通事故に積極的に取り組んでいます。交通事故に遭い、なるべく高額な賠償金を受け取りたいと考えておられるなら、ぜひとも1度、DUONまでご相談ください。