ひき逃げ被害者の対処法~慰謝料・損害賠償請求・自動車保険について~

ひき逃げされてしまったら、慰謝料や賠償金はどのように請求すれば良いのでしょうか?

相手がわからない場合でも、自分の自動車保険や政府の保障事業からお金を受け取れる可能性があります。

今回はひき逃げ被害に遭ったときの対処方法、請求できる慰謝料や賠償金、利用できる自動車保険について解説します。
交通事故に遭われた方は、是非参考にしてみてください。

1.ひき逃げの検挙率

1-1.ひき逃げは「救護義務違反」

ひき逃げとは、交通事故の加害者が被害者を救護せずに逃げてしまうことです。
交通事故の加害者は、事故現場で被害者を救護しなければなりません(道路交通法72条1項前段)。これを「救護義務」といいます。
救護義務違反は重大な犯罪であり、道路交通法違反として「10年以下の懲役または100万円以下の罰金刑」が科されます。
ところが現実には、事故を起こすとパニックになって逃げてしまう人が後を絶ちません。

1-2.ひき逃げの検挙率は高い

ひき逃げすると、どのくらいの確率で検挙されるのでしょうか?
法務省の犯罪白書によると、平成5年以降、死亡ひき逃げ事故の検挙率はほぼ100%となっています。平成30年は97.7%です。重傷事故の場合、平成15~17年頃は低くなっていましたが、直近では75.5%という高い水準となっています。平成30年における「全検挙率」は60.8%です。
ひき逃げの検挙率は「重大事故であればあるほど高くなる」といえるでしょう。
''法務省 ひき逃げ事件発生件数・検挙率の推移''
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/66/nfm/images/full/h4-1-1-05.jpg

ひき逃げされても、警察へ通報すれば犯人を見つけてもらえる可能性が高いといえます。

2.ひき逃げで請求できる賠償金

ひき逃げされたら、相手にはどういった賠償金を請求できるのでしょうか?

2-1.基本的には通常の交通事故と同じ

ひき逃げであっても、請求できる賠償金は基本的に通常の交通事故と同じです。

  • 治療費
  • 交通費
  • 付添看護費
  • 入院雑費
  • 介護費用
  • 休業損害
  • 逸失利益
  • 慰謝料

基本的には治療費や交通費などの治療関係費、入通院した場合の入通院慰謝料を請求できます。会社員や自営業、主婦などの方であれば、仕事を休んだ分の休業損害も請求可能です。
後遺障害が残ったら、後遺障害慰謝料や逸失利益も請求できるでしょう。逸失利益とは、後遺障害が残ったことによってはたらけなくなり、得られなくなった将来の減収分の補填です。
被害者が不幸にも死亡してしまった場合、遺族は加害者へ葬儀費用や死亡慰謝料、逸失利益を請求できます。

2-2.ひき逃げの慰謝料は高くなる可能性がある

ひき逃げの場合、相手に請求できる慰謝料の金額が通常よりも高額になる可能性があります。
慰謝料とは、被害者が受けた「精神的苦痛に対する賠償金」。ひき逃げは悪質な犯罪であり、救護してもらえなかった被害者は通常の交通事故より大きな精神的苦痛を受けると考えられるからです。

入通院慰謝料や後遺障害慰謝料、死亡慰謝料にはそれぞれ「相場の金額」がありますが、ひき逃げの場合には相場に上乗せしてもらえる可能性が高いと考えましょう。

3.ひき逃げされたときの現場での対処方法

もしもひき逃げされたら、現場で以下のように対応してください。

3-1.相手の特徴を証拠化する

まずは相手の特徴を押さえましょう。警察に捜査してもらうにも、どういった車だったか報告できなければ見つけようがありません。

  • 車種
  • 傷の有無や内容、ステッカーなどの特徴
  • 運転者の特徴(年齢、性別、背格好、服装など)
  • ナンバー

上記の特徴を押さえましょう。特にナンバーは非常に重要です。メモをとり、スマホなどで撮影すると良いでしょう。

3-2.警察に通報する

ひき逃げに遭ったら、必ず警察へ通報してください。通報しないと捜査を進めてもらえません。けがが酷く自分で呼べないときには周囲の人へお願いしましょう。

3-3.病院へ行く

重傷を負ったらその場で救急搬送されますが、ケガが軽ければそのまま帰宅するケースもあるでしょう。
ただ軽傷の場合でも、必ず早いうちに病院へ行くようお勧めします。自覚していなくてもケガをしている可能性が高いからです。軽いケガと思っていても実は骨折していて治療が長びくケースがありますし、頭を打ったら脳内出血が起こっている可能性もあります。
むちうちなどの症状が翌日以降に顕れるケースもあるので、必ずすぐに病院へ行って診察や検査を受けてください。
治療費は加害者や保険、政府保障事業から受け取れますし、健康保険も適用できるので、費用の心配をする必要はありません。

3-4.保険会社へ連絡する

ひき逃げに遭った場合、自分の自動車保険を適用して保険金を受け取れる可能性があります。歩行中や自転車に乗っているときの事故でも適用される保険があるので、できるだけ早く保険会社へ連絡を入れましょう。

4.ひき逃げされたときに使える自動車保険

ひき逃げされると、相手が判明するまでは相手方の保険や相手方本人には賠償金を請求できません。その場合でも自分の加入している自動車保険を使える可能性があるので、保険に関する知識をもっておきましょう。
ひき逃げで使える可能性のある自動車保険は以下のとおりです。

4-1.人身傷害補償保険

人身傷害補償保険は、被保険者やその家族が交通事故でケガをしたときに補償を受けられる保険です。実際にかかった治療費、休業損害、慰謝料などを限度額まで払ってもらえます。
自動車に乗っているときの事故だけではなく、歩行中や自転車に乗っているときに遭った事故にも適用できます。また親や配偶者、子どもなど家族の加入する保険も適用できる可能性があります。

ひき逃げ事案にも適用できるので、事故に遭ったら自分や家族の自動車保険加入状況を確認し、人身傷害補償保険に入っているなら保険会社へ保険金を請求しましょう。

4-2.搭乗者傷害保険

搭乗者傷害保険も人身傷害補償保険と同様、被保険者やその家族が交通事故でケガをしたときに補償してもらえる保険です。
人身傷害補償保険は「実際に発生した損害額」をベースにしますが、搭乗者傷害保険の場合には「定額計算」となる点が異なります。たとえば搭乗者傷害保険の場合「入院1日〇〇円」などの計算となります。

歩行中や自転車に乗っていた場合の損害が補填されるケースもありますし、家族の保険を適用できる可能性もあります。

4-3.無保険車傷害保険

無保険車傷害保険は、交通事故の加害者が任意保険に加入していない場合やひき逃げで加害者が不明なケースで適用される保険です。限度額が2億円となっており、死亡や後遺障害に対する補償が行われます。
ただし人身傷害補償保険との2重適用ができないので、「人身傷害補償保険に加入している場合には利用できない」と考えましょう。
人身傷害補償保険に入っていない人がひき逃げで後遺障害が残って重症となったり死亡したりしたら、無保険車障害保険から「最低限の補償」を受けられるイメージです。

4-4.車両保険

ひき逃げされると、こちらに物損が発生するケースもあります。こちらが自動車やバイク、自転車に乗っていたら車両が傷ついたり壊れたりするでしょう。車両が壊れたときには、車両保険を使って修理できます。
ただ車両保険を使うと保険等級が3等級上がるため、次年度からの保険料が増額されてしまいます。また「免責金額」があり、5万円~10万円程度は自己負担となるのが通常です。
車両保険を適用する前に、本当に得になるのかどうかをシミュレーションしてから判断してください。

5.政府保障事業とは

ひき逃げに遭ったとき、相手が見つかるまでの間は「自賠責保険」も利用できません。それでは被害者は最低限度の救済も受けられなくなってしまいます。そこで政府はひき逃げ被害者へ向けて「政府保障事業」を実施しています。
こちらを利用すると、自賠責基準の「てん補金」というお金を受け取れます。治療費や休業損害、慰謝料などを払ってもらえるので、随分助かるケースもあるでしょう。

政府保障事業の申請は、お近くの損保会社で受け付けてもらえます。申請書を作成・提出すると審査があり、決定されると指定した金融機関へてん補金が入金される仕組みです。

ただし自賠責保険の被害者請求と同様、たくさんの添付書類が必要なので、請求方法がわからない方は、弁護士までご相談ください。

6.ひき逃げに遭ったら弁護士へ相談を

ひき逃げ被害に遭ったら、後に加害者へ慰謝料や賠償金を請求できるよう、当初から適切に対応する必要があります。自分の保険や政府保障事業など、利用できる制度はフル活用しましょう。対応に迷ったら弁護士がアドバイスやサポートを致します。加害者が見つかった後の示談交渉や賠償請求も承りますので、お困りの際にはご相談ください。

まずは無料相談をご利用ください。

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