交通事故に遭ったときに使える自動車保険には以下の2種類があります。
- 自賠責保険
- 任意保険
今回はそれぞれの保険の種類や違い、特徴を解説します。
1.自賠責保険と任意保険
自動車保険には大きく分けて、「強制加入の自賠責保険」と「任意加入の任意保険」があります。
自賠責保険は、自賠法という法律によって必ず加入しなければならないと定められている保険。加入しないまま自動車やバイクを運転すると罰則が適用されるので、ほとんどの人が加入しています。交通事故に遭った場合でも、相手はほぼ自賠責保険に加入していると考えてよいでしょう。
任意保険については法律上、加入の義務がありません。加入率は四輪自動車の場合に8割程度、バイクの場合には4割程度です。
交通事故に遭ったとき、自動車であれば相手が任意保険に加入している可能性が高いといえますが、バイクの場合には加入しておらず、任意保険が適用されない可能性も相当高くなります。
2.自賠責保険と任意保険の違い
【自賠責保険と任意保険の主な違い】 | ||
---|---|---|
自賠責保険 | 任意保険 | |
強制加入か任意加入か | 強制加入 | 任意加入 |
限度額 | 低い | 契約者が選択可能。無制限にもできる |
補償内容 | 薄い | 厚い |
保険の種類 | 少ない | 多い |
物損事故への適用 | ない | ある |
保険契約者や被保険者側に発生した損害への補償 | ない | ある |
被害者の過失の取扱い | 重過失減額 | 過失相殺 |
2-1.限度額
自賠責の限度額は非常に低額です。たとえば通常の傷害事故の場合、限度額はたった120万円です。後遺障害が残ったケースでは等級にもよりますが最大4,000万円、死亡事故の場合に3,000万円となっています。実際には重度な後遺障害が残る事故や死亡事故の場合、損害賠償金は1億円を超えるケースも少なくありません。超過した分は契約者の自己負担となります。
任意保険なら契約者が自分で限度額を設定できます。「対人無制限」にしておけば重大な後遺障害が残った事故や死亡事故でも自己負担は発生しません。事故に対する万全の備えとなるでしょう。
2-2.補償内容
自賠責保険の補償内容は薄く、事故の相手方に対する最低限の保障という位置づけです。
任意保険では相手方の人身損害はもちろんのこと契約者やその家族、同乗者などに対する保障もあり、手厚くなっています。
2-3.保険の種類
自賠責の場合、事故の相手方の人身損害にしか適用されません。
任意保険では契約者や被保険者、家族に適用されるものや物損、自損事故に適用できるものなどがあり、保険の種類が多彩です。
2-4.物損事故への適用
自賠責保険は物損事故に適用されません。相手の車が壊れたら全額自己負担で支払う必要があります。
任意保険には対物賠償責任保険があり、相手の物損についても保障されます。自分の物損については車両保険を適用できます。
2-5.保険契約者や被保険者への損害補償
自賠責の場合、保険契約者や被保険者に対する補償はありません。補償対象は事故の相手方の人身損害のみです。
任意保険であれば人身傷害補償保険、搭乗者傷害保険、無保険車補償保険、自損事故保険など、契約者や被保険者、家族に適用される保険に加入できます。
2-6.被害者の過失の取扱い
任意保険の場合、被害者に過失があればその過失割合の分、請求できる金額が減額されます。
たとえば過失割合が3割なら請求金額は損害額の7割になります。
自賠責保険の場合には被害者の過失が7割以上になってはじめて保険金が減額されます。これを重過失減額といいます。減額割合も通常の過失割合より小さくなり、2割~5割の範囲です。
被害者の過失割合が高い場合、自賠責保険の保険金の方が高額になるケースもあります。
3.自賠責保険と任意保険、どうやって選べば良いの?
自動車を運転するなら必ず自賠責保険に入らねばなりません。
それとは別に、任意保険にも加入するよう強くお勧めします。事故を起こしたとき、自賠責保険だけでは補償が不十分だからです。
任意保険に入っておけば、自分や家族の人身損害や相手と自分の物損についても補償を受けられます。弁護士特約をつけておけば、無料で弁護士に相談や依頼ができます。
また交通事故に遭ったときには利用できる保険を適切に見極めて保険金を申請しましょう。
たとえば被害者の過失割合が高い場合には、任意保険より自賠責保険の方が有利になるケースもあります。
交通事故に遭われて自動車保険についてわからないことがありましたら、お気軽に弁護士までご相談ください。