交通事故で後遺障害等級1級・2級(要介護)になった場合の介護方法や慰謝料請求について
交通事故で重傷を負うと、生涯にわたる介護が必要になってしまうケースが少なくありません。その場合、要介護の後遺障害1級や2級の認定を受けて高額な賠償金を請求できる可能性があります。
不自由になってしまった体をもとに戻すのは不可能です。せめて正当な補償を受けてその後の人生に備えましょう。
今回は交通事故で認定される要介護の後遺障害1級2級について解説します。
事故で遷延性意識障害(植物状態)や脊髄損傷、高次脳機能障害などの重症となった方、ご家族様はぜひ参考にしてみてください。
目次
1.後遺障害等級1級・2級(要介護)とは
交通事故の後遺障害には1~14級までの14段階があります。
特に1級と2級については一般の後遺障害とは別に「要介護」の後遺障害(別表1)があり、該当すると極めて高額な保険金が支払われます。
後遺障害1級、2級になるのはそれぞれ以下のような場合です。
要介護の後遺障害1級になる場合
- 1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
- 1級2号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
要介護の後遺障害2級になる場合
- 2級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
- 2級2号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
1級と2級の違い
1級と2級の違いは「介護を必要とするレベル」です。
1級の場合には「常に介護が必要」なので、24時間誰かが介護し続けなければなりません。
2級の場合には「随時介護が必要」なので、食事や着替え、用便などの際にその都度介護が必要となります。
要介護の後遺障害が残る典型的な傷病
交通事故で以下のような症状になると、後遺障害1級や2級が認められるケースが多数みられます。
- 遷延性意識障害
- 脊髄損傷
- 高次脳機能障害
- 脳挫傷、頭蓋骨骨折
- 胸腹部の大規模な損傷(内臓破裂など)
2.要介護の後遺障害が認定された場合の賠償金
交通事故で要介護の後遺障害1級2級が認定されると、どのくらいの賠償金が支払われるのでしょうか?
- 後遺障害慰謝料…1級なら2800万円程度、2級なら2370万円程度となります。
- 後遺障害逸失利益…被害者の年収や年齢などによって異なりますが、1億円を超える可能性もあります。
- 将来介護費用…被害者の年齢や介護の方法によって異なりますが、5000万円を超えるケースが多々あります。
- 治療関係費…治療費や交通費、雑費、付添費用などを請求できます。
- 休業損害…症状固定するまでに仕事を休んだ場合の補償です。
上記を合計すると1億円を超えるケースも少なくありません。
3.後遺障害1級、2級になったときの介護方法や費用について
後遺障害1級2級になって介護が必要になったら、「誰がどのように介護するか」が問題となります。ご家族が自宅で介護するか施設で介護士に対応してもらうかで、費用が大幅に変わってきます。
まず介護士に介護を依頼する場合、介護費用を実費で加害者へ請求できます。
一方、ご家族がご自宅で介護する場合には1日8000円として将来介護費用を加害者へ請求できます。さらに自宅介護のため5000万円以上の改装費用を請求できるケースも少なくありません。
ご家族が介護すれば実際には支払いをしないので、手元に残る賠償金額としては大きくなるでしょう。ただし被害者が亡くなるまで親族が介護していけるのか、またご家族にかかる負担も考慮しなければなりません。被害者や自宅の状況によっては自宅介護が適さないケースもあります。
被害者をどこで誰が介護すべきかについては慎重な判断を要するので、迷ったときには弁護士までご相談ください。
4.後遺障害等級認定の仕組み
1級や2級に該当する重度な後遺症が残っても、自賠責で「後遺障害認定」を受けられなければ保険金や賠償金を払ってもらえません。
後遺障害の認定を行っているのは「自賠責保険」です。被害者の状態が「症状固定」した段階で資料を揃えて自賠責保険へ後遺障害等級認定の請求をすると、1ヶ月程度の調査の後、認定結果が通知されます。
後遺障害認定を受けるには、以下の2つの方法があります。
事前認定
事前認定は加害者の任意保険会社へ後遺障害認定の手続きを委ねる方法です。やるべきことは、症状固定した時点で医師に後遺障害診断書を作成してもらい、保険会社へ提出するだけです。
ただし事故の相手方である加害者の保険会社にまかせてしまうので、どのように手続きが行われているかわからないなどのデメリットはあります。
被害者請求
被害者請求は、被害者自身が資料を集めて自賠責保険へ直接保険金を請求する方法です。
必要書類が多く手続きに手間がかかりますが、自分で対応できるので透明性が確保されるなどのメリットがあります。
より確実に高い等級の後遺障害認定を受けたいなら、被害者請求を利用する方が安心でしょう。
5.後遺障害慰謝料の3つの基準
後遺障害1級2級に該当する被害者には、2000万円を超える高額な後遺障害慰謝料を請求できる権利が認められます。
しかし適用する「慰謝料計算基準」によっては大幅に慰謝料額を減額されてしまう可能性もあるので注意しましょう。
交通事故の慰謝料計算基準には以下の3種類があります。
・自賠責基準
自賠責保険が保険金を計算する際に適用される基準です。要介護1級の場合には1600万円、要介護2級の場合には1163万円です。
被害者請求すると、先に自賠責基準で計算された慰謝料が支払われ、不足分は後で任意保険会社と示談が成立したときに支払ってもらう必要があります。
・任意保険基準
任意保険会社が独自に定めている賠償金計算基準です。被害者が任意保険会社と示談する際に適用されます。
法的な弁護士基準より大幅に低くなっているケースが多いため、任意保険会社の提示額を受け入れると本来より慰謝料額を下げられてしまう可能性があります。
任意保険基準は弁護士基準と比べると2分の1~3分の1程度に設定されているケースも少なくありません。
・弁護士基準
弁護士が示談交渉するときや裁判所が賠償金を計算するときに適用される慰謝料計算基準です。
3つの基準の中でもっとも高額で法的な根拠を持つ正当な基準ですから、賠償金を請求する際には弁護士基準をあてはめるべきといえるでしょう。
弁護士基準を適用するには弁護士に示談交渉を依頼する方法がもっとも簡便で確実です。
後遺障害1級2級となった場合には慰謝料が3倍程度に上がるケースも多いので、必ず弁護士に依頼するようお勧めします。
6.後遺障害1級2級となったとき、弁護士に依頼するメリット
後遺障害1級2級に該当する場合、弁護士に依頼すると以下のようなメリットがあります。
後遺障害等級認定を受けやすくなる
重度の後遺症が残っても、後遺障害等級認定を受けられなければ高額な賠償金を獲得するのは困難です。弁護士に依頼すると被害者請求手続きも活用しながら最善の方法で高い等級の後遺障害等級認定を目指せます。高額な賠償金を受けられるので、被害者にとってメリットが大きくなるでしょう。
介護の方法について相談できる
要介護の後遺障害が残ると、どこで誰が介護すべきかなど、介護の問題でご本人やご家族が悩まれるケースが少なくありません。
そんなとき、交通事故の経験豊富な弁護士に相談すれば、事案に応じたベストな対処方法を知ることができます。請求できる賠償金の金額も考慮したアドバイスを受けられるので、経済的にも大きなメリットを得られるでしょう。
賠償金が大幅にアップする
後遺障害1級2級となった場合、被害者がご自身で示談交渉するのか弁護士が対応するのかで大きな差額が発生するものです。
慰謝料だけではなく過失割合も正しく修正されたり、逸失利益を適切に計算できたりして数千万円以上の開きが出た事例もこれまで多数経験してまいりました。そういったケースでは弁護士費用を払っても被害者の手元に数千万円単位の利益が残ります。
被害者がご自身で示談交渉すると賠償金を大きく減らされて損をしてしまうリスクが高まります。正当な金額の補償を受けるため、示談交渉は必ず弁護士へご依頼ください。
精神的ストレスが軽減される
交通事故で一生介護を要する体になっただけでも人は多大な精神的苦痛を受けるものです。そのような状態で加害者の保険会社と賠償金についての話をするのは大変なストレスとなるでしょう。
弁護士にお任せいただけましたら、精神的なストレスも大きく軽減できるメリットがあります。
当事務所では茨城県エリアを中心に交通事故被害者さまへの支援を積極的に行っています。事故で要介護の後遺障害1級2級となる見込みの高い方は、ぜひとも一度弁護士までご相談ください。